(管理人より)
地熱発電所が住宅地の中に作られ、周辺住民の間で問題になっているということを知り、別府市の小倉地区に実際に行って発電所建設の現場を見てきました。 ⇒ 地図
別府市の小倉地区は、別府市の観光の中心の「地獄めぐり」周辺から離れた山の中腹にあります。
地獄などがある中心部の観光案内所で、小倉地区の地熱発電について聞いてみましたが、何も知らないということでした。
一番高いところの住宅地のすぐ裏側がちょうど大分自動車道です。別府湾を見渡せる位置で素晴らしい景観が広がっています。
それなのに驚きました。なんとその一番上に発電所があるのです。閑静な住宅地の中に発電所が点在し、蒸気が出続けているのです。
私はその傍の道を歩いていて頭からブワーっと蒸気に襲われ思い切り吸い込んでしまいました。硫黄とはまた違う匂いでした。
もう湯けむりレベルではありません。
しかも、配管が道路の上を横切っていました。山の斜面にある住宅地の道路ですから、急斜面で車が離合できないほど狭いのです。
地熱発電所の中に住宅があり、まるで配管に囲まれて住んでいるような状態でした。この小倉地区の地熱発電の問題をフェイスブックやHPにとりあげている泉 武弘元市議の動画の中で、
「これは、一体工業団地なのか?」というほどだと言われていましたが、まさにその状態でした。想像よりもはるかに住宅と近いのです。
歩いてみると、建設途中の発電所には事業者の名前が入っている立札や看板、地熱発電事業者の事務所(別荘を買い取ってそこを事務所?とした感じ)がありました。
別府市地域 新エネルギー導入の事前手続き等に関する要綱による申請及び届出案件 平成27年6月末時点
ひとつの住宅地域にこんなに作ろうとしています! 瀬戸内自然エナジーは、なんと10箇所作る予定だそうです。
噴気による騒音、熱水処理の問題が起きて当然だと思いました 。瀬戸内自然エナジーのHPに動画がありました。噴気音を聞いてみましょう。
これが24時間毎日続いたら、そりゃ不眠にもなりますね。
※「温泉発電」は「温泉熱を利用したバイナリー発電」 ※「湯けむり発電」は「トータルフロー発電」と別府市のHPに書いてあります。
ということは小倉地区にある発電所はほとんど地熱バイナリーですね。
地熱バイナリー発電を、市のHPで、わざわざ温泉発電と言い換える目的はなんでしょうか?
八丁原地熱発電所にいったときも、しつこく温泉と同じ成分だの、温泉と同じ匂いだの、とにかく「温泉と同じ」を強調していました。
ここでバイナリー発電について調べておきます。
バイナリー発電設備に係る電気事業法関係規制の見直しについて 平成23年2月24日 原子力安全・保安院 電力安全課
これを見ると、原発事故前から、バイナリー発電の危険性を分かった上で業界の要望により規制緩和の準備をしていたことがわかります。
二次系の媒体には、不活性ガス(フロン)、可燃性ガス(アンモニア、ペンタン)、毒性ガス(アンモニア)のどれかが使われるということです。
いかにも「温泉と同じ」という市民を安心させる宣伝がされていますが、バイナリー発電はこういった危険なガスを使った発電装置なのです。
地熱発電の設備のメーカーにもよるのでしょうが、株式会社 瀬戸内自然エナジーは代替フロン(不活性ガス)を使っているとHPに書いてありました。
メーカーは神戸製鋼とアクセスエナジー社を使っているそうです。
神戸製鋼所の小型バイナリー発電システム「MB-70H」 媒体は HFC245fa(フルオロカーボン245fa) 安全データシート
アクセスエナジー社製 Tharmapower XLT125 (アクセスエナジー社) 媒体はR245Fa 安全データシート
媒体が「不活性ガス」の場合は、B T主任技術者選任、工事計画届出等の規制は不要、と規制緩和しています。
しかも住宅地や道路との距離は規制の適用除外としています。
瀬戸内自然エナジーの使う媒体は「不活性ガス」だから、住宅地の中や高速道路のすぐそばに、バイナリー発電所が建設されたというわけですね
このすぐ裏側が大分自動車道です。
バイナリー発電設備に係る電気事業法関係規制の見直しについて 平成23年2月24日 原子力安全・保安院 電力安全課 を見ると
今回の規制の見直しに当たっては、仮にバイナリー発電設備のリスク(表-4参照) に対する安全対策が十分に講じられなかったとしても、公共の安全の観点から問題 が生じることがないと考えられる場合について、工事計画届出、BT主任技術者選任 等の規制を求めなくてもよいこととした。
この検討結果は、当然のことではあるが、現時点における結論であり、今後のバイナリー発電設備の運転実績、事故・トラブルの発生状況、安全性に関する技術情報 の蓄積、技術開発の進展等を踏まえて、必要に応じてさらなる見直しが行われるべき ものである。
「安全対策が十分に講じられなかったとしても」 って??? 意味不明です。
このように、なぜか、当時の原子力保安院の資料で規制緩和の道筋がつけられていたわけです。
そして
世界3位の地熱資源大国 「温泉発電」で脱・宝の持ち腐れ 2013/6/19 この再エネ推進サイトの記事にこの5月には安倍首相が別府市を来訪・視察し、ボイラー・タービン主任技術者の常駐が必要という現在の規制を、小規模な温泉発電施設などでは緩和する意向を表明した。
とあります。 元神戸製鋼の安倍首相が、バイナリー建設のための規制緩和をしてたんですね。まあ、わかりやすい。
脱原発市民は「脱原発のために地熱発電を!」と大騒ぎしていますが、原発推進派の安倍首相が地熱バイナリー発電も推進しているということです。
これは「原発をやめるために、地熱発電の規制緩和をしてくれた」んじゃなくて、「原発でも地熱でも儲けるために」「地熱で原発を補完させるために」規制緩和してるのです。
地熱発電を推進したいという、一般市民や有名人のあまりの多さにめまいがします。
ネット上では、同じようにこの現場を見学しても、利害関係者はブログなどに呆れるほどいいことしか書いていません。
「温泉のお湯を捨てるのはもったいない」といった「廃棄物利用」に逆らえない心理を利用した論調、さらに「温泉と同じ」という刷り込み、地熱発電の業者が農園をやるなどの「自然」と共存するアピール。
地熱発電の周りにも、欺瞞的なプロパガンダが確かに存在しています。
「地熱は日本の資源!」「日本もアイスランドみたいにやろう」といった論調も根強い。その論調を補強する要員(ジャーナリストや、政党関係者など)もいます。
実際には、
有害性のあるガスを使った設備であること。
発電時に発生する騒音、噴気音による周辺住民の不眠などのトラブル。
熱水処理で、農業用水に入り込み、今年の稲作を中止したところも出ている。
温泉が枯渇した場合には、どう保障するのか。
景観は取り戻せるのか。
など様々な問題が起きています。
地熱バイナリー発電は簡単に、「原発よりまし」などといってすすめていいものではないということを、ブログに書いておきます。
私が実際に現場で見たところ、景観対策として事業者が敷地に植えたとされる巨大なヤシの木も、枝がないので柱と同じで目隠しにすらならず、発電施設は丸見え。まるで意味がありません。
しかもボイラー・タービン主任技術者の常駐していませんので、何かトラブルがあったらどうするのでしょうか?
経済産業省のお墨付きをもらって、住宅地の中にまでやりたい放題に発電施設を建設しているという印象を受けました。
発電施設を、温泉の観光施設のようにして集客しようというのかわかりませんが、地獄周辺の観光エリアと違って、閑静な住宅地にこのような施設を造るというのは理解に苦しみます。
メガソーラーの時もそうですが、規制緩和しといて問題が起こり「条例作れ」というパターン。
その間に、誰が儲けているのでしょうか?
九州電力に売電という嘘が書かれていますが、実際は私たち市民の電気代に上乗せされた再エネ賦課金で、事業者から買い取っているのです。
結局最後は、自然破壊、健康被害、環境汚染。
私は別府の温泉が大好きなので温泉が枯渇して欲しくありませんし、電気は足りているので発電施設は不要だと思います。
とりあえず「対策してもらえばいい」ということでなく、地熱発電、再生可能エネルギー、原発の本質的な問題を調べ、
国のエネルギー供給技術について普通の市民全員が自分の頭で考えることが大切だと私は思います。