毎日新聞2017年2月14日 10時45分(最終更新 2月14日 16時02分)
マリアナ海溝など太平洋の水深1万メートルに達する深海で採取した甲殻類から、ポリ塩化ビフェニール(PCB)やポリ臭素化ジフェニルエーテル(PBDE)といった有害物質が高濃度で検出されたと、英研究チームが13日付のオンライン科学誌に発表した。
これらの物質は電気部品の絶縁油や難燃剤などに広く使われ、分解されにくく生物に蓄積しやすい。チームは「人間活動による汚染が世界中の海に広がっていると考えられる」と警告している。 チームは太平洋北西部のマリアナ海溝と、南太平洋のケルマデック海溝の水深7000~1万メートルで調査した。(共同)
汚染物質、水深11キロの海溝最深部で検出 海洋研究
2017年02月14日 13:42 発信地:パリ/フランス
【2月14日 AFP】世界最深の海に生息する小型の甲殻類から、使用禁止の化学物質による汚染が検出されたとの研究結果が13日、発表された。人為的な環境汚染が地球の最果てにまで及んでいることを示す初の証拠だという。
「海の掃除人」と呼ばれるこれらの甲殻類は、水深11キロ近くでさえ、冷却剤や絶縁流体などに使われる化学物質による「桁外れの」レベルの汚染から逃れることはできないと、研究チームは述べている。
米科学誌「ネイチャー・エコロジー・アンド・エボリューション(Nature Ecology and Evolution)」に掲載された論文によると、汚染物質は海底に沈んだプラスチック廃棄物や動物の死骸などに由来する可能性が高いという。
論文の共同執筆者で、英ニューカッスル大学(Newcastle University)のアラン・ジェイミーソン(Alan Jamieson)氏は「深海は世界の辺境にある原始のままの領域で、人為的な影響を受けないと今なお考えられているが、これは不幸にも、真実とまるでかけ離れていることを、今回の研究は示している」と語った。
ジェイミーソン氏と研究チームは、太平洋のマリアナ海溝(Mariana Trench)とケルマディック海溝(Kermadec Trench)から「アンフィポッド」と呼ばれる端脚類(たんきゃくるい)の海底生物を収集するために、特別製の潜水艇を使用した。
エビに似た腐肉食性のアンフィポッドを捕獲するために、サバの身を餌にしたわなを使用した研究チームは、捕獲したアンフィポッドにみられる化学物質の痕跡を分析した。
分析の結果、PCB(ポリ塩化ビフェニル)を含む高濃度の汚染物質が蓄積されていることが判明した。PCBは、がんやホルモンの混乱を引き起こすため、40年近く前に使用禁止となった。
■広範囲の生態系にとっての意味合いは?
「地球の最果てにある最も近づき難い生息環境の一つで、これほど桁外れに高濃度の汚染物質が発見されたという事実は、人類が地球に対して長期にわたって計り知れない影響を及ぼしていることを、実に痛烈に示している」と、ジェイミーソン氏は述べた。
さらに研究チームは、環境中に長期間残留するもう一つの汚染物質、PBDE(ポリ臭素化ジフェニルエーテル)の痕跡を、アンフィポッドの体内で発見した。PBDEは難燃剤に使われている。
「PCBとPBDEは、マリアナとケルマディック両海溝のあらゆる水深に生息する、全ての種にわたるサンプル全部に存在していた」と、研究チームは論文に記している。
世界最深のマリアナ海溝では、サンプルで検出されたPCBの最高濃度が、中国で最も水質汚染が深刻な河川の一つである遼河(Liaohe River)から水を引く水田のカニで検出される濃度より50倍高かった。
研究チームは、汚染物質が「世界の海洋全体にわたって、海の最深部にまで」広がっているに違いないと推察している。
アンフィポッドを餌とする動物や、食物連鎖のさらに上位の動物などの「より広範囲の生態系にとって、これが何を意味するのかということは、まだ明らかになっていない」と、ジェイミーソン氏は声明で指摘した。(c)AFP/Mariëtte Le Roux
(管理人より)
もう海が毒で汚れきっているという絶望的な証拠です。電気部品の絶縁油や難燃剤が海の底まで・・・・化学物質の行き着く先は海の底でした。
日本からの放射性物質も蓄積しているでしょう。福島原発事故を収束できない日本もですが、北朝鮮もこっそり放射性廃棄物を海に捨てているようですね☟
2017/2/14 18:31 共同通信
【ローマ、台北共同】イタリアの海運業者が北朝鮮政府と取引し、1995年以降に台湾沖周辺に放射性物質を含む多量の廃棄物を不法投棄していたことが14日までに明らかになった。台湾の政府は専門チームを立ち上げ、事実関係の調査を始めた。
環境汚染問題を担当するイタリア下院の調査委員会が8日、同日解禁された軍情報機関の機密文書の概要を公表し、問題が明るみに出た。文書には、イタリア人のジョルジョ・コメリオ氏が95年以降に北朝鮮政府と取引し、2億2700万ドルの報酬と引き換えに、放射性物質が入った容器20万個を台湾周辺の海中に投棄したとの記録があった。
今回の甲殻類汚染の原因は、電気部品の絶縁油や難燃剤、プラスチック廃棄物。みな人間が作り出したもの。すべて人間の「科学技術」によるものです。人間はなんて罪深いのでしょうか。
約40年前に使用禁止になったポリ塩化ビフェニール(PCB)についてはこのブログでも記事にしてきました。
北九州市PCB廃棄物処理上積み問題(2)PCB廃棄物ってどんなものか?
1950年代から原子力発電が「夢のエネルギー」として推進され、同時にPCBを含む変圧器などの電気機器も作られていきました。つまりPCB廃棄物も、人間が「電気を使う」ために、生み出された負の遺産だと言えます。電気を消費するためにテレビや洗濯機などたくさんの電化製品もPCBを使って作られるようになっていきました。便利な家電などの工業製品を次々に欲しがる私たちの暮らしの始まりです。現在の家電にも難燃剤が含まれています。
昭和48年(1973)のTV コマーシャル をみると、洗脳が凄まじいことがわかります。このころから省エネを理由に冷蔵庫を売っていたんですね。今と同じ。
さらに、当時の公害を指摘するような映像もありました⇒ 懐かCM 5~70年代シリーズPart3
そして家電CM。これらが全部、電子廃棄物になっていたなんて・・・テレビを見ていた頃は考えもしませんでした。こうして俳優、芸人、タレント、スポーツ選手、歌手が大企業の製品を売るためCMに出まくって、企業からのあぶく銭を手にしていたのです。こうやって「大企業=ブランド=間違いない」という権威主義的な価値観が市民の中に作られていったわけです。それは今も同じ。
60年代~70年代家電CM集
'77-80 家電CM集 vol.5 テレビ1
有害性が明らかになり、仮に新たな製品には使用されなくなったとしても、過去に作られた製品すべてを瞬時に回収できるわけではありません。回収しても、その処理は困難を極めます。PCBを使った製品は私たちの暮らしの中に長い間存在し続け、最終的にPCBや難燃剤を含むこれらの製品が捨てられた段階で、環境中に出てしまうのです。今でも日本中に産業廃棄物の溜め場があり、不法投棄などで廃車や廃家電が山積みになっていますが、それらから有毒な物質が土や水の中に染み出て、海へ流れていった結果が今回の海底の甲殻類の汚染だと考えられます。製品製造時における有害な工場排水も、薄めて流したとしても、それが最終的に海の生き物に濃縮していることをもっと深刻に考えなければならないでしょう。
廃プラスチックのゴミが、劣化して小さくなって海を汚しているということは、もうブログで書き尽くしました。☟
クジラの死体の胃の多くがプラスチックゴミでいっぱいだったという事実は人類に対する恐ろしい告発「海の掃除人」である甲殻類は、汚染されたクジラの死体も食べていたのかもしれないと思いました。人間が海をゴミ箱にしたという結果でもあります。
さてここで、市川先生の『新公害原論』から 科学技術、公害について抜粋引用します☟
市川定夫著『新公害原論』より
●人類は文明というものを著しく発達させて科学というものをうみ出し、経験から覚えた単なる技術とは質的に異なる、科学に裏付けされた技術つまり俗にいう科学技術というものを編み出してきた。
●人類が科学技術によって作り出した、この地球上にかつて存在しなかったもの。それを我々は人工物と総称しています。たとえば化学物質であれば人工化合物といわれます。そういうものは全て、地球上にはかつてなかったわけですから、どんな生物もかつて遭遇あるいは経験したことがないものでして、だからそういうものに対しては、生物は適応を知るわけもないし、対応するすべを知らないのです。結論的に言えば、こうした人工的なものに対しては、生物は全く無防備なのです。従って、こうした人工物が生物体内に入ってきた時も、生物はそれを分解したり無毒化したり、速やかに排出したりするような機能はもち合わせていませんから、これら人工物が生物体内にどんどん蓄積され、被害が一段と大きくなります。そしてこうした現象は、物質が循環する生態系には元来見られないものなのです。ですからこうした人工物は、本来、生命系とは相容れないものと言えるのです。
●それぞれの生物種は、その進化の途上で遭遇してきた環境条件には何らかの形で適応性は持っていても、かつて遭遇したことのない環境条件に対しては適応性を獲得する機会がなかったのですから、適応できないことが多い、というより全く適応できない場合がほとんどなのです。そしてそのことこそが、公害というものがおこる理由なのです。
●いわゆる公害も、科学技術に対する短期的な経済的価値判断や、目の前の利潤追求のための技術の使用から起因しているのです。これはすべて短期的な経済合理主義に基づくもので、この地球の生態系のしくみや、そのしくみが生物の進化と適応の結果であることをまったく忘れていたのです。
●われわれは、生物がその進化と適応の過程で遭遇したことがなかったものや条件を、また不可逆的なものを、環境中に出したり、つくり出したりしてはならないのである。それがこの「公害論」の結論である
市川先生の2007年のインタビュー記事より。原発事故前から警鐘を鳴らしておられたのに、今のような状況になってしまったわけです。複合汚染、多重汚染のことも指摘しておられます☟
科学技術の「発達」を考え直す必要性がある インタビュー: 市川 定夫 より 抜粋引用
80年代からは、人工化合物と人工放射線の問題を追及しました。すでに人工化合物は9万種類ともいわれ、これまでの人類が経験したことがない状況を招いています。これまで人類は、人工物に対して識別能力を持っていなかったし、そのことを知りませんでした。人工化合物と人工放射線の2つを合わされると相乗効果が発揮され、そのことが人類の種としての生存にとって非常に脅威となるものです。自然界になかったものを人間が作るべきでなかったと思っています。その象徴的なものとして、核兵器、原発、劣化ウランがあります。
低線量放射線の問題や人工放射性核種と人工化合物との相乗効果などは、核兵器、原発などを廃絶するうえでも重要なポイントだと思います。自然界には存在しなかった、つまりあらゆる生物がかつて遭遇したことがなかったもの、適応のすべを知らない多様な人工のものが、どうして私たち人類や他の多種多様な生物に繁栄をもたらしうるのでしょうか。
私たちは、長年にわたって、科学技術の「発達と発展」という、誤った「宗教」を信じさせられ、誤った道を辿ることを強要されていたのです。こうした事実を真剣に改めて考え直す緊急の必要性が迫っているのです。
40年以上もテレビコマーシャルに乗せられて、ホイホイ家電を買って、買い換えて、電気を使って便利な暮らしを謳歌してきた私たちの暮らしのツケがついにきています。自分で自分の首を絞めている状況に気づいていない人ばかり。環境を汚染しているのが私たちの暮らし。そうさせていたのは原子力ムラなんです。メーカーがゴミのことを考えないという無責任はずっと続いているのです。
企業が市場で競争すること自体が産業廃棄物を増やすことになる=環境を汚染する、ということは資本主義社会の中では無視されています。
科学がわからない人は騙され、愚かで従順な工業製品の消費者となり、科学がわかってる人も違う角度、企業側の見方で騙されるのですから。実に巧妙で悪質。一般市民が化学物質や重金属に対しての認識がないまま、今に至ったことが原因だと私は思います。だから放射能問題でも騙され続けているわけです。毒物に関する無知。
市民は自分だけじゃなくて、自分の家族も何十年も全員騙されて、間違った価値観で全員が生きてきたのだということを信じたくないし、思いたくもないから、騙されたことを認めないのです。三世代で騙されている。とくに高度経済成長期~バブルの恩恵を受けた富裕層の家族は騙されたことは認めない。自分の頑張りで豊かになったと思っています。
バブル時代に20代だったいわゆる「バブル世代」は長生きはできないだろうと思います。その頃チェルノブイリ原発事故もありました。子どもの頃からインスタント食品、合成シャンプー、合成洗剤、ケミカルナプキンを使い、化学繊維の服を着て、顔には化学物質を塗りまくり、その価値観のまま今に至っています。病気は病院と薬で治せると科学技術を盲信。
どの時代も、その時代の中で最先端の技術というのは、豊かな人、力の強い人が独占していました。そして近代は科学を用い大企業が工業生産するようになりました。ごくごく僅かな人たちだけが「そんな技術はやりすぎだ!」と言っていたのだと思いますが、それは圧倒的多数の人の欲望を追い求める声にかき消されていきました。だからここまで来てしまったわけです。
こんな複合汚染のどうしようもない放射能汚染国になっって、海もあらゆる毒物で汚染されたのですから、今までと同じ価値観でいけると思う方がどうかしてるのです。
今の高齢者は成長期に飢餓状態だったかもしれませんが、放射性物質や化学物質に汚染されたものを食べてはいませんでした。粗食でむしろ健康食。だからその後の医療技術の発達で長生き出来ました。終身雇用で年金も満額。今は体の成長期にも毒入りの食べ物を食べ、半分病気の体で過労死するまで働かされるブラック職場。年金は消えました。
原因は、国と企業、企業の紐が付いた政治家、騙された愚かな市民です。
それでもまだ、科学技術を盲信し、擦り寄り、公害加害企業を応援して、工業製品を買い続けるのですか?
これは私自身に対する問いかけでもあります。