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渡辺一彦小児科医「CSの誘因は皮膚・粘膜に接触した、また脳内に侵入した化学物質であり心因性ではありません」

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(管理人より) 札幌市白石区 渡辺一彦小児科医の化学物質過敏症に関する資料です。

 

「4,5年前から柔軟剤の香料、においのきつい成分によって 化学物質過敏症が うちのクリニックで倍増している (ある患者は)思考力、記憶力、集中力の低下で交通事故を起こしてしまった」


 

 

朝日新聞 2017年11月2日 
私の視点 小児科医 渡辺一彦
香料による被害 国は早急に調査・規制して

「学校で頑固な頭痛や目まい、皮膚炎、ぜんそくなどがおきたという子どもが来る。他人の衣服に付着した柔軟剤の残り香や消臭・除菌スプレー剤が原因である」

 

 

渡辺一彦医師が「札幌医師会通信」に載せた投稿です1  より

化学物質過敏症(CS)について

最近匂いのきつい衣装の女性~時に男性とすれ違うことはありませんか。
2012年頃より各地の消費者センターへ、「柔軟仕上げ剤」で頭痛や吐き気が出るという苦情が急増していますが、皆さんの周りではどうでしょうか。私は道新の取材を受け、CSの連載記事の冒頭に載りました(2017.3.22)。関心を持たれている先生もおられると思いますので、この機会にCSについて寄稿します。

症例提示

最近私の経験した例を紹介します。

児童例ですが、元々アトピー性皮膚炎でしたが、明るく元気な園児でした。年長から園内で皮膚の掻痒と咳が出現するようになり、大好きな幼稚園を止む無く退園しました。

入学してからも級友とは仲良くしていましたが、学校でも同様の症状が誘発されます。自宅ではほぼ快適に生活できます。

また通学路、スーパーの洗剤コーナー、地下鉄の中でも誘発されます。経過から柔軟剤の臭いが誘因とわかりました。学級には他に柔軟剤の臭いで体調不良が出るような子はいません。母親も柔軟剤、化粧品などで頭痛や吐き気、全身倦怠感などが誘発されます。

患児は珍しいことに柔軟剤に含まれることのある有毒なイソシアネートの特異的IgE抗体が陽性でした。
イソシアネートの影響は不明ですが、少なくとも暴露を受けていたという実証です。

学校側では「柔軟剤で健康被害がでる児童がいるので自粛に協力を」と呼びかけるポスターなどを掲示し、また換気を徹底していますが、その子にとってまだ十分とはいえないようです。 

化学物質過敏症の最近の傾向

私は90年代後半よりシックハウス症候群(SHS)に取り組んできました。2000年から厚労省の研究班(故飯倉洋治昭和大学小児科教授)の協力研究員を数年務め、「アトピー性皮膚炎など室内環境が関係する疾患への対策研究会・北海道」に参加・運営してきました。そこで新築やリフォームでSHSを発症した症例を検討してきました。

その症例の中に、誰もが使う洗剤、化粧品、芳香剤、防虫剤、スプレー剤、家具などの日用品に反応して多彩な症状を起こす例~CSへの進展例~を経験してきました。自宅ばかりではなく学校や園、職場でも発生しました。

これらの症例については、先の研究会の「患者宅調査」集にも載せてあります。SHSは2002年には病名登録されました。SHSを予防するため、2003年に建築基準法が改正され、SHSはその結果急激に激減しました。

しかし、その後も私の外来には新築やリフォームに関連のない、先に挙げた身近な日用品などからの揮発物で健康被害を受ける患者が時々受診しました。全国的にも同じ傾向にあり、2009年にはCSも病名登録されました。

そして登場した「消臭・香りブーム」です。

名前は挙げませんが、きれいな女性タレントや元テニスプレーヤーがTVや新聞で広告している芳香柔軟剤、消臭除菌スプレーなどが家庭に広まりました。学校では制汗スプレーが大流行で、中年男性も「加齢臭」対策に消臭剤使わないと非常識といわれかねない雰囲気です。そのためCSが急増してきました。まさに「香害」です。

しかし、「消臭・香りブーム」を煽ったメーカーは、「安全性を確認した製品を製造販売している」として、CSの増加を無視しています。当院でもこの数年ではCS患者が倍増し、全道各地から受診や電話相談があり困惑しています。CSは一過性の軽症例もあるとは思いますが、そうした例は受診しないので実態は不明です。

受診する例は重症・難治例が多く、当院では障害年金を受けている患者は15人になりました。一、 二年毎の更新ですが、改善した例はほとんどありません。

更に休学・退学、別居・離婚、休職・退職・転職など不幸な転帰例は数多です。社会経済的環境の劣化で生活保護を受ける例も増えてきました。医療費ばかりでなく何らかの対策で生活費もかさみます。

勤労者に限ってみても、明らかに労災と思えるケースでも認定されたのはわずかで、良くて傷病手当金をもらってお払い箱です。

患者にとって理不尽なことであり、だれしもが予想もしていなかった病気です。まさに「新しい公害」と言えるでしょう。これらは社会的な損失であり、CSの予防や治療、支援などに関して、もはや政策的な対応が必要な段階にあると思います。

化学物質過敏症(CS)について

最近匂いのきつい衣装の女性~時に男性とすれ違うことはありませんか。
2012年頃より各地の消費者センターへ、「柔軟仕上げ剤」で頭痛や吐き気が出るという苦情が急増していますが、皆さんの周りではどうでしょうか。私は道新の取材を受け、CSの連載記事の冒頭に載りました(2017.3.22)。関心を持たれている先生もおられると思いますので、この機会にCSについて寄稿します。

症例提示

最近私の経験した例を紹介します。児童例ですが、元々アトピー性皮膚炎でしたが、明るく元気な園児でした。年長から園内で皮膚の掻痒と咳が出現するようになり、大好きな幼稚園を止む無く退園しました。

入学してからも級友とは仲良くしていましたが、学校でも同様の症状が誘発されます。自宅ではほぼ快適に生活できます。

また通学路、スーパーの洗剤コーナー、地下鉄の中でも誘発されます。経過から柔軟剤の臭いが誘因とわかりました。学級には他に柔軟剤の臭いで体調不良が出るような子はいません。母親も柔軟剤、化粧品などで頭痛や吐き気、全身倦怠感などが誘発されます。

患児は珍しいことに柔軟剤に含まれることのある有毒なイソシアネートの特異的IgE抗体が陽性でした。
イソシアネートの影響は不明ですが、少なくとも暴露を受けていたという実証です。

学校側では「柔軟剤で健康被害がでる児童がいるので自粛に協力を」と呼びかけるポスターなどを掲示し、また換気を徹底していますが、その子にとってまだ十分とはいえないようです。 

化学物質過敏症の最近の傾向

私は90年代後半よりシックハウス症候群(SHS)に取り組んできました。

2000年から厚労省の研究班(故飯倉洋治昭和大学小児科教授)の協力研究員を数年務め、「アトピー性皮膚炎など室内環境が関係する疾患への対策研究会・北海道」に参加・運営してきました。そこで新築やリフォームでSHSを発症した症例を検討してきました。

その症例の中に、誰もが使う洗剤、化粧品、芳香剤、防虫剤、スプレー剤、家具などの日用品に反応して多彩な症状を起こす例~CSへの進展例~を経験してきました。自宅ばかりではなく学校や園、職場でも発生しました。

これらの症例については、先の研究会の「患者宅調査」集にも載せてあります。SHSは2002年には病名登録されました。SHSを予防するため、2003年に建築基準法が改正され、SHSはその結果急激に激減しました。

しかし、その後も私の外来には新築やリフォームに関連のない、先に挙げた身近な日用品などからの揮発物で健康被害を受ける患者が時々受診しました。全国的にも同じ傾向にあり、2009年にはCSも病名登録されました。

そして登場した「消臭・香りブーム」です。

名前は挙げませんが、きれいな女性タレントや元テニスプレーヤーがTVや新聞で広告している芳香柔軟剤、消臭除菌スプレーなどが家庭に広まりました。学校では制汗スプレーが大流行で、中年男性も「加齢臭」対策に消臭剤使わないと非常識といわれかねない雰囲気です。そのためCSが急増してきました。まさに「香害」です。

しかし、「消臭・香りブーム」を煽ったメーカーは、「安全性を確認した製品を製造販売している」として、CSの増加を無視しています。当院でもこの数年ではCS患者が倍増し、全道各地から受診や電話相談があり困惑しています。CSは一過性の軽症例もあるとは思いますが、そうした例は受診しないので実態は不明です。

受診する例は重症・難治例が多く、当院では障害年金を受けている患者は15人になりました。一、 二年毎の更新ですが、改善した例はほとんどありません。

更に休学・退学、別居・離婚、休職・退職・転職など不幸な転帰例は数多です。社会経済的環境の劣化で生活保護を受ける例も増えてきました。医療費ばかりでなく何らかの対策で生活費もかさみます。

勤労者に限ってみても、明らかに労災と思えるケースでも認定されたのはわずかで、良くて傷病手当金をもらってお払い箱です。

患者にとって理不尽なことであり、だれしもが予想もしていなかった病気です。まさに「新しい公害」と言えるでしょう。これらは社会的な損失であり、CSの予防や治療、支援などに関して、もはや政策的な対応が必要な段階にあると思います。 

 

 CSの診断について 渡辺一彦医師の札幌医師会通信2 (札幌の渡辺一彦医師が、札幌医師会通信2017年9月号に投稿したものです)  より


CSの診断について

ほとんどの人は臭いがきつくても不快感だけで無症状で、その場を離れれば済みます。しかしCS中には頭痛や眩暈、吐き気などが出たりする人もいます。また長時間吸入することにより、全身倦怠感、脱力感などで寝込んでしまう人もいます。

臭いは化学物質ですが、有害性の低いものでも一部の人間には上記の症状を誘発させることがあると認識しないと診断ができません。
CSは様々な統計で数%といわれています。決して珍しい病気とは思えません。

確かに中高年の女性に多いのですが、男性にもまた学童でも罹患します。周囲には大げさな人、 神経質な人、 「変人」と嘲られ孤立を深めています。症状そのものは多彩で、受診された患者さんには転院例が多く、自律神経失調症、更年期障害、身体表現性障害、不安神経症、パニック障害、うつ状態などと診断されていることがあります。

確かに症状はその通りです。しかしそのような前提の治療の効果はほとんどありません。化学物質と症状の因果関係を検討しなければ見逃します。CSは初期であれば、誘因の回避、除去で症状が軽快し、再暴露で再発することがはっきりしています。周囲の理解があり、協力次第では全く普通の生活が送れます。

しかし、誘因の回避が困難であると、症状は多彩になり、重症化し、誘因の物質が拡大し、より低濃度で発症してきます。こうなると鑑別も困難で容易に診断が下せません。しかも病悩期間が長く、重症化すればするほど、先に挙げた精神疾患が続発してきます。

中には慢性疲労症候群、線維筋痛症も併発していて、その科の先生と共同で診ている患者もいます。病名登録にはない「電磁波過敏症」すら合併することもあります。無臭症の人でもCSは発症することがあり、単なる嫌な臭い、きつい臭いなど臭いそのものがCSの誘因ではないということが理解できます。

また無臭の化学物質でも誘因になります。くどいようですがあくまでCSの誘因は皮膚・粘膜に接触した、また脳内に侵入した化学物質であり、心因性ではありません。診断のためには問診は非常に重要であり、時間がかかります。専門的には眼神経的な検査などもありますが、行える施設は国内でも数か所に限られます。 

 

渡辺一彦医師の札幌医師会通信に投稿されたCSについて3  (札幌の小児科の渡辺一彦先生が札幌医師会通信2017年9月に投稿したものの転載になります)  より

CSの治療と対策

薬物療法で化学物質にたいする過敏性を完治した例は私の経験ではありません。有効な治療は誘因物質を回避、排除した適切な環境で生活、労働することですが、その適切な環境を得ることが

重症化したケースでは困難なのです。アスファルト臭や車・ストーブの排気で外出も出来ません。中には樹木や草から発生する臭い、ヒトから放散する微量生体ガスにも影響される深刻な例あります。

ですからCSの治療・予防のため、社会がその存在を認め、CSのための環境づくりが必要です。CSは環境の「カナリヤ」的存在であり、CSにとって良い環境は、万民にとっても良い環境なのです。

受動喫煙の健康被害が認知され、分煙、禁煙が社会的な流れになってきましたが、まさにCSにも同じことが言えると思います。先の香料に関しても被害者がいる以上、製造・販売・使用に何らかの規制が必要です。なおCS患者は受診にも一工夫が必要です。

通常の医療機関、介護施設に入れない、また長時間滞在できない例が目立ちます。当院では基本的にまだ患者が来ない朝8時頃に受診させ、しっかり換気した状態で迎えます。院内は抗酸化剤を塗布していますが、それでも院内では吸着剤入りのマスクを着用しなければならない患者がいます。

過敏な人では院外で診ることもあります。診る方も大変です。この拙文がCSに関心を寄せるきっかけとなれば幸いです。

 

 

 札幌市白石区 渡辺一彦小児科医

「ある商品が原因になって一定の人たちが健康被害を受けることが確実なときその商品はたとえ大多数の人たちにとって有益だとしても欠陥商品だ。そのような商品を開発・販売することは企業倫理として許されるのだろうか」 週刊金曜日 2016/6/3 





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