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Channel: ブログ「風の谷」  再エネは原発体制を補完する新利権構造
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市川定夫教授「マハティール氏が三菱系から沢山の選挙資金をもらってたから三菱化成を認めてしまった」

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以前にマレーシアのレアアース採掘放射能問題について記事を書きましたが、

マレーシアのレアアース抽出工場〜ブキメラ放射能汚染「私たちは、涙がかれる程たくさん泣きました

採掘・製錬時に放射性物質を撒き散らすレアメタル・レアアースは自然エネルギーにも使われている事実

マレーシアの環境保護団体を通じてブキメラ村民の依頼を受けた市川定夫教授の講演録がありましたので転載します。

http://tinymsg.appspot.com/iTD  より

学習集会
低線量被曝の影響と JCO事故健康被害
講師:市川定夫・埼玉大学名誉教授
講演録(1)2003.8.25 臨界事故被害者の裁判を支援する会

より、ブキメラ放射能汚染についての講演部分を抜粋転載します。

貴重な写真はhttp://tinymsg.appspot.com/iTD  より転載

 

マレーシアでのモナザイト被害

 
 関連してお話しますが、僕がさっき言ったように使ったガラス線量計ではなく、熱蛍光線量計(TLD)という、ごく小さい精度の高い放射線測定器を使ったケースに触れておきます。

 今日は話さなかったですけど、マレーシアで起こった、日系のその当時の三菱化成という会社が放射性トリウム、トリウム232という核分裂するものを含むモナザイトという鉱石から、イットリウムという希土類金属を取り出す工場を作ってたんです。

ところが、もとのモナザイトにはトリウム232は7%含まれているんですが、イットリウムを取り出したあとの廃棄物には14%もトリウム232があって、しかもトリウム232というのは放射能の半減期が141億年で、天然の放射能で一番長寿命なんです。141億年ですよ。地球ができてからまだ46億年しかない。それが入ってるのに柵も何にもなしに、野積みで捨ててたんです。

 僕がマレーシアから依頼を受けて調査に行った。合計7回行ったんですけども、1回目にそれを見た時で推定350トンもの廃棄物の山。それで僕がその周辺でのTLDによる測定調査結果を出したら、英文で書いたのを周辺の住民達が、それをよりどころにして、イポー高等裁判所に訴えた。

マレーシアはイギリス法ですから、政府の認可がかかってる件は高等裁判所からしか始まらない。日本でいう一審はないんです。高裁は僕の報告書を鑑定書と認めて、その裁判は仮執行命令の裁判だったんですけど、住民の訴えを認めて、AREという会社だったんですけど、そのAREの即時業務停止、それからすでに捨ててあった強い放射性のトリウム廃棄物を撤去し、安全管理するという命令を出しました。確かにARE工場はすぐに作業をやめたんです。

 ところが、何て言ったかというと、「裁判所の仮執行命令を従うんではない」と。マレーシア政府が新しく作ろうとしていた原子力法に合うように改善すると。その当時マレーシアには原子力に関する法律が全くなかったんです。普通の放射性物質を扱う法律しかなかったんです。

 トリウム232というのは国際的に核原料物質・核分裂物質として認められてて、それを扱うには原子力法がいるんですけど、マレーシアはそれを作ってなかった。しかもマハティールという今の首相が首相に選ばれた直後です。

三菱との癒着

  マハティール氏が選挙後はじめてやったのが、三菱系からものすごいたくさんの選挙資金をもらってたから、三菱化成にそういうことを認めてしまった。現地にAREという会社を作って。同時に三菱系に非常にプラスになることをやったのは、その当時、もう日本の車はたくさんの会社の車種が入ってたんですが、三菱とだけ提携して、その頃に走ってたランサーという車種をマレーシアで国産して、税法上などの特典を与えて優遇しました。

 とにかく、そういう総理大臣のもとでその工場が許されてしまった。三菱は、総理大臣が認めてるんだから、放射性物質を捨てようが何しようが平気だろうし、柵をしたり、放射能のマークをつけたりしたらかえって疑われる。だけどその当時のマレーシアの法律でも、少なくとも柵はして、放射能のマークはつけなきゃいけなかった。それを守らなかったため、牛を追う子どもたちが、牛を追いながらその放射性トリウムの上を越えていったり、そんなふうだったんです。

 それで7回行って、証言をして、イポー高裁は最終的に正式な裁判でも違法判決をして、操業禁止と廃棄物の撤去を命令したんです。それからAREと三菱は最高裁に訴えたんですけど、最高裁では逆転勝訴したんです。形の上では。最高裁は、僕の調査は個人的な調査であって、その会社がやった組織的な調査に比べて、個人の勝手な判断なり、恣意的にデータを作る機会があったと断じたんです。

そんなことはできないような調査方法をしてたのにです。つまり、僕は現地で瞬時瞬時の放射線量率のメーターが、ここは放射線量率高いよ、ここはレベル高いよと、誰もが見れる、全面公開調査で。

 ただ、TLDによる、ものすごく小さい集積線量を測るのは、それを読み取ることができるのは僕の大学でしかできませんから、そのところは完全に誰も見てない世界になります。だから、そのためにガイガーカウンターで測ったものを現地に残したわけです。それと一致してるかどうか、瞬時の線量率、つまり単位時間あたりの線量率と集積線量が合ってるかどうか、一般に分るように。裁判所にもそれを出してるわけです、証拠としてね。なのに最高裁はそういうことをぜんぜんわからないで、たった1人の調査は複数でやった会社のデータよりも信用できないと断定したんです。

 ただし、やっぱり最高裁判所も気が引けたのか、どういうことを書いたかというと、そのARE社が、これだけの措置をとり、これだけの気を使って、今度できた原子力法を忠実に守れば、安全性を確保できると。ところが、その最高裁の判決で言われたものを全部やろうとしたら、ものすごい金がかかるんです。そこでイットリウムを取り出して得られる収入よりもずっと大きくなるから撤退したんです。撤退して何て言ったかというと、中国から買い付けた方が安いと言ったんです。

 そういう三菱のことにまでいきましたけど、とにかく、マレーシアでも言われたのは、トリウム廃棄物を捨てたのが発覚してからも、みんなに言ったことは、放射線は少し浴びた方がずっと健康にいいんだと、会社は皆さんに貢献してきたと平気で言ったんです。

 ところが、裁判中に白血病の子どもが、はじめ2人で、4人になり6人になり、しかも最高裁の判決が出るまでに最初の6人は全部死んでしまった。それで僕は撤退したあと行ったときに、7人目の子が発生してました。まだ、トリウムが地面の中にいっぱい残ってるんです、撤去したと言いながら。撤去したあと測定しても放射線量は高いままなんです。141億年で放射能がようやく半減するものが、まだたくさん残ってるんです。

ブキメラ放射能汚染について書かれた「Wasted Lives(ふみにじられた生命)」 というペナン消費者協会の冊子(絶版)の年表から、市川教授の部分を抜粋します。

【1984年12月9日】 ブキメラ住民、日本の放射線と遺伝子研究の専門家である、市川定夫教授を招き、ARE工場に隣接する空き地と池の放射線レベルを測る。市川教授の計測によると、そこでの放射線レベルは危険性のある高さで、最高では許容レベルの約800倍を示した。

【1986年10月28日】 市川定夫教授、再びブキメラを訪れARE工場周辺の放射線値は、やはり許容レベルを越えていることを暴露。市川教授は工場への立ち入りを拒否された。

本文p63 より

1984年末埼玉大学の遺伝と放射線の専門家である市川教授は、2種類の機械、〜熱蛍光線量計とポータブル測定器〜を使って工場の周りの放射線レベルを測定した。AREに隣接する不法投棄場での測定結果は、非常に危険度が高く、許容レベルの約800倍であった。(市川教授によると、妊婦がこのレベルの放射線を4日間浴びると、奇形児を生む確率が高まることになる。)登録された投棄場でのもう一方の測定では、放射線レベルは許容量の約25倍だった。菜園の近くでは許容レベルの3.5倍を示した。

本文p64 より

10月に行った市川教授の2回目の計測は、IAEAは主張していたようにその区域を全面的に汚染除去したのではないということを示していた。さらに悪いことには彼は、一部の廃棄物が公共の場所に不法投棄されていることも知ったのである。市川教授は、工場の一時貯蔵所と中と外を結ぶ排水管の下にトリウム廃棄物があるのを見た。そこの放射線レベルは、極めて高く14000ミリレム/年だった。彼はその廃棄物が、貯蔵区域の内側からパイプを通って外部に流れ出したのだと結論づけた。

何百人もの住民が日常的に使っている通路に沿ってトリウム廃棄物が捨てられていた。そこで計測された放射線量は驚くべき高さであり1時間あたり8ミリレムであった。(すなわち年間70,080ミリレムにあたる)

AREの被覆にもかかわらず、工場周辺と一時貯蔵所の放射線レベルはいまだに高く、AELBの許容量である一般人年間100ミリレムの2倍から3倍上回っていた。その他3箇所の廃棄物が捨てられていた場所でも、高い計測結果が得られた。それらの場所は

◎ メングレンブに捨ててあったトラック  2700〜3600ミリレム/年

◎ ケパヤンに捨ててあったトラック  900〜8000ミリレム/年

◎ トラクター・マレーシア工場裏の不法投棄場  5000〜7200ミリレム/年

彼の計測結果はガンマ線の外部被曝のみであった。もし、ラドンガスや放射性の粒子の吸入による内部被曝を考慮すると、電離放射線による住民の被曝はもっと高いとさえ考えられるだろう。

本文p32より

遺伝子学と低線量被曝の専門家である市川定夫教授(ARE周辺で放射線を測定し高濃度の放射線を発見した)によると、

「われわれは、生まれてから死ぬまで、自然放射線を避けることはできません。しかし、そのような自然放射線の上にAREがやっているような被曝をさらに加えるべきではないのです。」

トリウム崩壊系列

放射性元素       半減期         放射線

トリウム232       139億年        α線

ラジウム228       6.7年         β線

アクチニウム228    6.13時間       β線

トリウム228       1.91年         α線

ラジウム224       3.64日         α線

ラドン220(ガス)     52秒          α線

ポロニウム216      0.16秒        α線

鉛212           10.6時間       β線

ビスマス212       60.5分         β線およびα線

ポロニウム212      0.0000003秒    α線

鉛208            安定          なし

 

(管理人より)

ブキメラ放射能汚染問題は、原発・再エネの本質的な問題を含んだ優れた教材であると私は思います。逆に言えば、ここを無視すれば根本的な解決はありません。被曝と廃棄物に正面から向き合わない限り、自分の暮らしや生き方をあらためることなど不可能だからです。

原発・再エネ問題の本質は「差別と公害」。

●放射能問題〜モナザイト鉱石を製錬すると放射性トリウム232が環境中に撒き散らされる。周辺住民は内部被曝し病気になる。原発による放射能汚染と同じ。

●廃棄物問題〜毒物が不法投棄されることにより自然環境を破壊する。

●工業製品大量消費問題〜レアアースを使ったハイテク工業製品(再エネを含む)を大量消費する私たちの暮らしと、国の経済政策との関係。大企業の横暴。

●公害〜加害企業は日本の三菱(原発産業=再エネ産業=軍需産業)日本企業がアジアの国を踏みつけにして経済的な繁栄を得る構図。

 

再エネ・原発関連企業に働く人たちは、この事実を意図的に無視します。しかし、レベル7の放射能汚染国で、ついに健康被害が出始め、自らの主張の整合性が取れなくなっている再エネ脱原発市民が見られるようになりました。

市民が言えることは命と環境を守る立場から「これ以上追加被曝をさせるな」ということです。国と企業のしたことをよく見て、工業製品大量消費におちいっている自分の暮らしぶりをあらため、再生可能エネルギーの欺瞞、原発の欺瞞を伝えたいと思います。

http://www18.ocn.ne.jp/~nnaf/122d.htm

マレーシア・レアアース製錬工場の環境影響 
(後篇):エィジアン・レアアース(ARE)社事件のその後  和田喜彦(同志社大学経済学部)  より引用

不適切極まりない廃棄物管理の結果、住民に健康被害の症状があらわれた。マレーシア平均の3倍の異常出産、40倍以上の発生率で子どもたちが白血病や癌に罹患するという痛ましい事態が発生したのだ。また、子どもたちの白血球数の減少という形でもあらわれた(下グラフ)。米国の核実験で被曝したマーシャル諸島の子どもたちの白血球減少数と似た数値を示したのである(T. Jayabalan 医師の調査による。小島1992年)。

 

住民はARE社の操業停止を求めて抗議活動を展開。1985年にはイポー高等裁判所に提訴。高裁は仮処分として操業停止命令を出し、操業を一時止させた。その後ARE社は廃棄物の仮備蓄場を建設したため、マレーシア原子力許可委員会から操業の再開を認められた。ところが仮備蓄場は穴を掘っただけの粗末なものであったため、住民は抗議行動を再開。1992年にはイポー高裁で、操業中止命令。住民側の全面勝訴となった。しかし、1993年にマレーシア最高裁の上告審では操業を合法として認める逆転判決が出された。

 ARE社は1994年1月、「中国から輸入するほうが経済的」として、撤退。工場は閉鎖され、放射性トリウム14%を含むトリウム廃棄物が放置された。

 ARE工場の解体と廃棄物保管場所の設置と除染作業が行われたのは2003年から2005年にかけて、操業停止から9年もたってからであった。現在、従来の地上の保管場所が古くなり、放射性廃棄物を新しい地下保管場所に移転中である。

 三菱化学も州政府も、現在に至るまで、被害者の病気とARE社の排出した汚染物質との因果関係を認めていない。見舞金と称して、月いくらかの生活費補助を出しているのみである。ただ、廃棄物の管理・保管、見舞金の支出には莫大な費用がかかっており、操業収益を上回るコスト負担が三菱化学の肩にのしかかっているという。

 ちなみに、三菱化成(現、三菱化学)は、四日市ぜんそくの加害企業のひとつである。1972年に、三菱化成は四日市工場の建設前に、環境影響評価を行わなかった過失があったとする判決を受けた。そして、ぜんそく患者に対し、損害賠償を支払うことが命じられた。三菱化成は、四日市で得た教訓をマレーシアでまったく活かしていなかったのだ(小島1990年)。

 

  30年前に発生した「公害輸出」によって甚大な健康被害が発生し、外国企業の加害責任が曖昧にされ、被害者の救済は不十分のままという実態があるからこそ、マレーシア市民は、ライナス社の製錬工場を信用していないのではないか(ライナス社製錬工場問題については拙稿前篇(本誌120号)を参照)。そうであるのならば、加害企業が所属する国である日本は、ライナス社問題に対してより積極的な働きかけを行う必要があるのではないか。

 日本政府もマレーシア政府も、そして国際社会も、レアアース市場が活気づく今こそ、過去の教訓から学ぶことが必要であろう。

 現在、日本政府と原発メーカーは、トルコ、インド、ヨルダン、ベトナムなどに原発を輸出しようとしている。原発輸出も輸入国現地に放射能汚染と被曝を引き起こすばかりか、大量の放射性物質を発生させる。万一事故が発生した場合には、放射性物質が大地と海を汚染し、放射能被曝は甚大なものとなる。日本政府やメーカーは、フクシマの過酷事故の教訓から何も学ばないまま原発輸出を強行しようとしているが、四日市ぜんそく事件から何も学ばなかった三菱化成と同じ罪をおかすことになるだろう。

 


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