http://www.nsr.go.jp/activity/bousai/trouble/20141226-1.html
(株)HMSにおける放射性同位元素の所在不明について報告を受けました
平成26年12月26日 原子力規制委員会
1.(株)HMSからの報告内容
(株)HMSから、ちば作業所(千葉県千葉市若葉区上泉町1170番地付近の造成工事現場の事務所)において12月18日から水分・密度計(土の締固度などを測定する機器)に使用する放射性同位元素(コバルト60とカリフォルニウム252)が装着されたステンレス製の棒(以下「線源棒」という。)が所在不明との連絡が12月25日にありましたのでお知らせします。
株式会社HMSから受けた報告の概要は別紙のとおりです。⇒ 「(株)HMSから受けた報告」【PDF:43KB】
赤線は管理人
2.所在不明の放射性同位元素
核種:Co-60(2.59MBq)及びCf-252(1.11MBq)
状態:ステンレス容器(長さ10mm×直径2mm)に密封された状態でステンレス製の棒(長さ220mm×直径16mm)に装着された状態又は線源棒がアルミニウム製の筒(長さ430mm×直径30mm)に入った状態<別添参照>⇒「所在不明の放射性同位元素」【PDF:103KB】
3.原子力規制庁の対応
(株)HMSに対し一般公開を行い、引き続き線源棒の捜索を行うよう指示するとともに、(株)HMSが行う原因究明及び再発防止策について確認していきます。
なお、当該放射性同位元素を発見された方は、直接触れずに、最寄りの警察署又は下記の電話番号にご連絡下さい。
大成建設(株)千葉支店管理部管理室 電話:043-243-1611
原子力規制庁 事故対処室 電話:03-5114-2121(平日) 03-5114-2203(夜間・休日)
原子力規制庁
担当 原子力災害対策・核物質防護課事故対処室 室長 武山 松次 03-5114-2121(直通)
担当:坂本、青山
放射性物質含む土質調査機紛失 NHK千葉 12月26日 18時56分
千葉市若葉区の工業団地の造成を行う工事現場で、微量の放射性物質が入った土質調査を行うための機器がなくなっていることが分かり、千葉県は、機器を見つけたら、念のため触らないよう呼びかけています。
千葉県によりますと、なくなったのは土の中の水分や密度を調べるための、「線源棒」と呼ばれる長さ22センチ、直径1.6センチの棒状の調査機器で、微量の放射性物質が含まれています。
千葉市若葉区の工業団地の造成を行う工事現場で、土質の調査を請け負っていた業者が使用していました。
今月18日に、この業者の従業員が調査機器を収納する容器を確認したところ、なくなっていることが分かり、1週間にわたって工事現場を探しましたが、見つからなかったことから、25日、原子力規制庁に報告しました。
千葉県によりますと、この調査機器に入っている放射性物質は微量で、1メートル離れた場所に1年間いても、人体に影響はないということです。
千葉県は、調査機器を見つけたら、念のため触らないようにし、警察などに連絡するよう呼びかけています。
株式会社HMSにおける放射性同位元素を装着した線源棒の所在不明について
千葉県防災危機管理部 平成26年12月26日17時00分
電話:043-223-2175
(管理人より)千葉市若葉区上泉町1170番地付近の造成工事現場の事務所で放射性物質が行方不明になっています。
ステンレスに密封された線源棒(長さ220mm×直径16mm)で、コバルト60が2.59メガベクレル(259万ベクレル)、カリフォルニウム252が1.11メガベクレル(111万ベクレル)
線源から1m離れた場所での線量評価は2μSV/h。直接手で触ってはいけないものですが、なぜ紛失したのかわかりません。
鍵が刺さったままだったことが報告書に書いてありますし、建設現場事務所の管理がずさんだったのではないでしょうか?
場所をグーグルアースで調べました。なんとメガソーラーの周りの工業団地の造成地なんですね 東京ドーム3個分の広さ!
その面積の中からたった22センチの棒を探せるんでしょうか?シンチレーション測定器を使って探しているそうですけど気が遠くなります。
もし、盗難だったらどうなるんでしょうか?千葉市以外に運ばれる可能性もあります。
NHKの報道も「微量」「念のため」と書いたりして危険性を過小評価しています。
子どもが見つけてそれで遊んだらどうなるのでしょうか?密封線源とは言え、壊れない保証もありません。
そもそも、こんな危険なものをずさん管理していた会社は、一体どこなのか?
(株)HMSについて検索かけましたが、会社名だけでは水分・密度計を使用するような会社はヒットしません。
水分・密度計自体はフィールドテック社の製品だと思われます。
http://www.fieldtech.co.jp/p/products/ft102/ より
FT-102はNEXCOや国交省などの現場における土の締め固め管理で利用されている水分密度計です。RI(ラジオアイソトープ)を利用して土の水分・密度を測定します。盛土の品質管理試験に必須である湿潤密度・含水比の試験を迅速に行うことができます。
名称は「透過型RI水分・密度計」
ガンマ線源60Co(コバルト)で密度測定を、そして中性子線源252Cf(カリフォルニウム)で水分測定をする機器です。
「原子力規制委員会へ「使用届」を提出するだけで特別な資格などを必要とせず、どなたでもご使用いただくことができます。」と書いてあるので使用届けは出されていたはずです。
しかし、放射線取扱主任者でもない人が扱える機械なんですね!
使用届けには表示付認証機器を使用する会社の代表者印を押印することになってますから、(株)HMSの代表者名が書いてあると思います。
事務所は施錠してあったのでしょうか?
(株)HMSについてですが、社名で検索かけると人材派遣会社が出てきます。http://www.hms2011.com/index.html
それと情報ウェブサイトの企画・製作・運営http://www.hoyumedia.com/about/
原子力規制委員会に電話をかけて聞きましたがわからないということでした。それもおかしな話ですが。年明けにまた確認してみようと思います。
放射線を利用した地中水分および密度の原位置計測について―鹿島神之池附近のモデルテス ト― という古い論文の中に
「・・幸い日立製作所からこの要望を充たした手頃の中性子水分計(γ 線密度計付)が市販されるようになった」という一文があります。
しかし 日立のHP http://www.hitachi-hightech.com/jp/product_list/?ld=sms1 には水分密度計はありません。
今回、線源棒を紛失した(株)HMSというのは、さてどの会社なのでしょうか?
関係法令は、 放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S32/S32HO167.html
参考
千葉市で1971年に同じような事例が起きています。
千葉市におけるイリジウムによる放射線被ばく事故 (09-03-02-11)
<概要>
1971年9月、千葉県内のある造船所の構内で、作業員が非破壊検査用の強力な放射線源であるイリジウム192(5.3ci,1.63E12Bq)を拾った。それが何なのかわからないまま好奇心からズボンのベルトにさし、下宿に持ち帰った。下宿を訪ねた5人とともに6人(年令:20~30才)が被ばくし放射線急性障害が生じた。そのうちの1人は、右手の潰瘍(かいよう)と糜爛(びらん)を繰り返し、22年後に血管の萎縮による右第1指(親指)と第2指(人差し指)の拘縮と骨の萎縮、病原菌による感染と疼痛が生じ、この2本の指を切断した。
<本文>
1.事故の状況
千葉市のある造船所構内で、作業員の1人(B)がステンレス製の鉛筆のようなものを拾った( 図1 )。Bは、それが何なのかわからないまま好奇心からズボンのベルトにさし、下宿に持ち帰った。夕刻、彼の下宿を訪ねた5人の仲間が、その鉛筆のようなものに次々と触ったり、眺めたりした。そのうちの2人(AとE)は、その部屋に泊まった。その後4日間、この部屋には数人の仲間が何回か出入りした。この造船所では、放射線を利用して製品検査を行う非破壊検査が行われていた。この検査に用いる強力な放射線源であるイリジウム192(5.3Ci,1.63E12Bq)が紛失していることがわかり、懸命に探したが見つからず、科学技術庁(当時)にそのことを届けでた。Bがステンレス製の鉛筆のようなものを拾ってから1週間後、彼の下宿でそれを触った仲間の1人が、自分たちの触った鉛筆状の奇妙なものがこの線源ではなかったかと探したところ、下宿の庭に落ちているのを発見した。この線源は強力なガンマ線を放射するので、触ったり近くにいた人に放射線急性障害を引き起こし、この6名(年令:20才~30才)は検査のため千葉市にある科学技術庁放射線医学総合研究所(放医研(現独立行政法人放射線医学総合研究所))に入院した。
2.被ばく線量の推定
医療処置をする前に次の2つの方法で被ばく線量を推定した。まず、被ばくした人達が被ばく当時に身につけていた物で放射線量を知る手がかりになる物を探したところ、3名が腕時計をつけていたことに気がついた。当時の腕時計にはルビーが使用されていた。ルビーはガンマ線を受けると熱発光現象を示すことが知られている。そこで、ルビーの熱発光量を測定し被ばく線量を推定した(物理学的線量評価)。
6人に当時の行動を思い出してもらい、全員の下宿での在室時間表を作って各人の被ばく線量を推定した(事故の再構築)。また各人の血液中のリンパ球を培養し、染色体の異常がないかを調べた。血液中の白血球のうちリンパ球は放射線に対する感受性が高く、放射線に被ばくすると染色体異常を引き起こし、異常の出現する頻度は被ばくした線量に比例するので、各人の被ばく線量を推定することが可能である(生物学的線量評価)。この2つの方法で推定した線量は驚くほどよく一致した( 表1 )。
3.急性放射線障害
急性障害の全身症状としては、最も被ばく線量の大きかったAだけが、被ばく1日目に食欲不振と吐き気におそわれたが、これは急性放射線症の症状のひとつである( 表2 )。次に骨髄での造血障害を詳しく調べると、数人に白血球の減少等の造血障害があった。最も強い症状はAだった。第2週から第7週にかけて、貧血、白血球および血小板の減少がみられ、軽い出血傾向の増大がみられた。
皮膚障害では、線源を持ち帰ったBと比較的長時間触れていたAには、線源が触れた部分に26~91Gy(グレイ)程度の被ばくを受けたと考えられ、9月末から痛みの強い紅斑や水泡ができた。線源が臀部(でんぶ)にあたったBには臀部に大きな潰瘍(かいよう:皮膚粘膜層において深部まで及んだ表面の欠損)と壊死(えし:生体の局所組織または細胞の死滅)が生じた( 図2 )。生殖器では全員に造精障害がみられた。線源をベルトにぶらさげたBは睾丸に1.75Gy程度の放射線を浴びたことになり、一時的な無精子症になった。
外部被ばくによる障害の場合、被ばく直後にははっきりした症状は出現しない。しかし、ある程度以上の放射線を全身に受けると、感染に対する抵抗力が落ちたり、出血しやすくなる。Aには典型的な症状があったので、心身の安静、栄養補給、感染防護等の一般処置を行いながら、特に無菌室に収容して、抗生物質の投与も行った。その結果、Aは最も白血球の減少した時期にも感染することなく、順調に回復過程に入った。さらに、皮膚障害に対しては局所の感染防止に主点をおいて治療したところ、順調に回復した。
困ったことに、Bの場合は、右手の指が瘢痕(はんこん:組織の欠損補充にあたって再生した結合組織(内芽組織))萎縮を起こして伸びなくなった。日常生活に不便なので、2回にわたって東大形成外科で手術し、腹壁の皮膚を移植した結果、指が曲がるようになった。その後、全員が急性放射線障害から順調に回復し、1972年3月までに全員が退院した。
4.後発性障害
事故後9年目までは、B、A両名の皮膚障害は瘢痕以外の異常は認められなかった。その後Bの右手は潰瘍と糜爛(びらん:皮膚または粘膜層における比較的表面の組織欠損。さらに深部にまで及んだときは潰瘍という)が繰り返し生じ、右第1指(親指)、第2指(人差し指)の拘縮(こうしゅく:関節の固着)と骨の萎縮が始まった( 図3 )。さらに、1993年には、病原菌による感染と疼痛が現れ、この2本の指を切断せざるを得なくなった。病理学的検査の結果、血管の萎縮によることがわかった。
このようなイリジウムの事故を引き起こしたのはどの会社なのか調べると、三井造船でした。
国会の議事録の中に関連する発言がありました。
第073回国会 公害対策及び環境保全特別委員会 第4号 昭和四十九年十一月十一日(月曜日) 午前十時二十六分開会 議事録 より 日本原子力研究所東海研究所保健物理安全管理部環境放射能課 研究員 角田 道生氏
中略
もう一つの次の事例は、わが国で昭和四十六年の九月に起こったイリジウム一九二による公衆被曝の例です。 これは千葉県の市原市にある三井造船所で被破壊検査をしていました労働者がイリジウム一九二という工業用線源をあやまって落としてしまったと。 そのまま気づかずにうちへ帰って、翌日通りかかった人が好奇心でもってそれを拾って自宅に持ち帰ってしまった。 この線源は五・三キュリーで万年筆を大きくしたような形をしていて、ちょっと見たところ何だかよくわからないということでうちに持って帰ったわけですが、 当初、紛失した会社はやはり届け出しないで自分で何とかさかそうと――隠したいという気持ちもあったと思いますが、さがして三日間たつわけです。それからいよいよないというんで届け出をすると。届け出から二日目に紛失事件がニュースとして流された。 そのニュースで被曝者が、これがあぶないんじゃないかということに気がついて、そこで一応被曝は終わるわけですが、 この五日間に、拾った当人と彼の部屋に遊びに来ていた五人の友だちがその間被曝したという結果になっております。 この六名の者がかなり大量の被曝をしまして、最高の被曝者は百レムを軽くオーバーしているというふうに推定されております。 現在原子力発電所の安全審査では、仮想的な大事故においても公衆の全身被曝が二十五レムをこえないということが審査基準の一つとされていますが、 この基準をはるかに上回る公衆の被曝――この場合には作業労働者じゃなくて、その作業と直接関係ない人間なわけです。 こういう公衆の被曝が現実に起こっていると。 また、住民への事故の周知ですね、これがなければもう少し被曝期間が長いから結果として被曝量はもっとふえたであろうというようなことをこの例は示しております。 また、この例で注目しておく必要があるのは、公衆の被曝に至る経路、たとえば施設から放射性物質が公衆の生活環境にどう入っていくかということは、必ずしも煙突から出るだけではないと、いろいろな多様な経路があり得るというその複雑さをまた物語っていると。 したがって、実際の事前の評価というのは、これはかなり数字のモデルだけでできないようなむずかしい問題が必然的に含まれているということが今後の安全評価をどう解決するかという際の大きな問題点の一つではないかというふうに考えております。