放射性物質検出装置作る
住吉台の樗木さん 焼却場の実験先探す
篠山市住吉台の工学エンジニア、樗木(ちしゃき)博一 さん(62)が、ごみの焼却施設の煙突から出る排ガス検査用の「放射性物質検出装置」を自作。
焼却で放射性物質が空気中に放出されていないかを調べる実験に協力してもらえる自治体などを探している。
福島原発事故によって出た放射性廃棄物が福島県外の焼却施設で処理されていることから、「反原発の活動などは行ったことがないが、一人のエンジニアとして、今の測定方法では放射性物質が検出できないと考えた」という樗木さん。
「試行錯誤をしてつくった装置。測定させてもらえる場所があれば」と呼びかけている。(森田靖久)
樗木さんは、九州大学工学部電気工学科を卒業し、同大学院エネルギー変換工学を専攻。三菱電機などでエンジニアとして研究開発に取り組んできた。
2011年3月の福島原発事故後、がれきや放射性廃棄物を福島県外で広域処理する問題が浮上。樗木さんは焼却した際に放射線が外部に漏れていないか検査する測定方法が不十分であると考えたという。
現在、国が定めている測定方法は、煙突の穴に入れるろ紙と排ガスを吸収したビンの中の水がサンプルになる。
しかし、樗木さんによると、焼却炉内の「放射性セシウム」の中には、空気やミストのようなナノメートル(1ナノメートルは、1メートルの10億分の1)レベルの極めて小さなものがあり、国の測定方式はこの微粒子を捕捉できる仕組みではないという。
実際、焼却を行った場所でセシウムは不検出となっている。
樗木さんが線香の煙を放射性セシウムに見立てて行った実験では、煙の粒子は水に溶けず、ビンの外へ抜け出ている。
「このまま全国で処理されれば、セシウムが飛散して大変なことになる」と考え、関係各所に呼びかけたものの対策がとられなかったことや、大阪市ががれき処理を受け入れたこともあり、「実際に装置を作り、測定して見せないといけない」と考えた。
樗木さんの測定装置は、原発で採用されている「シンチレーション式」と呼ばれる仕組みを小型化したもの。
箱の中を鉛で覆い、その中に高感度の放射線量計を設置。排ガスを箱の中に引き込む前と引き込んだ後の両方を測定し、数値に変動があれば、排ガス内に放射性物質が含まれていることを示す。
住民団体などから依頼を受け、焼却を行っている福島県鮫川村や、岩手県盛岡市などで説明する場があったが、国の定める方法以外の測定は拒否されたという。
「とても単純な方法なのに、測定させてもらえないのは、『もめたくない』『実際に検出されたら困る』ということではないか」と話す樗木さんは、「とにかく一度実際に実験をさせてもらいたい」と訴えている。
装置の仕組みなどを説明する動画(https://youtu.be/up-tKf9MlPw)をネット上に公開している。
2014/12/6 樗木博一氏「焼却施設から放射性セシウムが大気中に放出されている~国のインチキ測定法ではセシウムを検出できない~」
排ガス中の微小な霧状またはガス状の放射性セシウムを捕捉する方法(案)
焼却施設から空気中に放射性物質は放出されていないのか? 樗木博一 より
一般焼却施設で震災瓦礫を焼却した場合、焼却炉(800℃)内で放出された放射性セシウム(沸点671℃、融点28℃)は気化し、冷却装置(800℃→200℃弱)で200℃弱に冷却されて、バグフィルターの前では
①放出されたセシウムはミスト=霧状(複数個のセシウム分子が結び付いた状態)、またはガス状(融点と沸点の間の温度でも蒸気圧があるので、一部は揮発している)で排ガス中に存在することが考えられる。
②他の元素と化合して固体となっている。
③ダストに付着している。
といったことが考えられます。
空気の78%が比較的不活性な窒素N2 であることを考慮すると、冷却装置内で200℃弱に冷却されてからバグフィルターに入るまでの時間内に、ほとんど(実質的にすべて)のセシウムがバグフィルターに捕捉されるような大きさの化合物(固体)となっているという確証がありません。
また、残りのすべてがダストに付着しているかということも確証がありません。霧状またはガス状のセシウムが存在する可能性があります。
微小な霧状またはガス状のセシウムが存在すれば、バグフィルターを通り抜けてしまいます。