越水「人災だ」住民反対押し切りソーラーパネル設置
2015年9月12日9時23分 紙面から 日刊スポーツ
鬼怒川から大規模な水害が発生した茨城県常総市で11日、住民の逆井(さかさい)正夫さん(67)が「これは人災だ」と訴えた。同市若宮戸地区では、昨年3月ごろから大規模太陽光発電所(メガソーラー)が建設されたことがきっかけで自然堤防が削り取られた。豪雨による濁流はその場所から越水し、住宅地をのみ込んだとみられる。
近隣住民で最後までメガソーラーの建設に反対していたのは逆井さんだった。昨年3月ごろから常総市、国土交通省の担当者らに鬼怒川氾濫の恐れを訴えた。今回の水害では同市三坂地区の堤防が決壊し、若宮戸地区で越水が発生した。
建設場所は私有地だったが、「生命や財産を失う不安があった。それらを守る権利が国民にはある」と声を上げ続けた。しかし、同年5月には、同市石下庁舎の職員に「何かあれば自己責任で逃げてください」と切り捨てられた。「鼻つまみ者にされたんだ」。役所に味方にされず、逆井さんは地域で孤立していった。
高さ2~3メートルの自然堤防が約150メートルにわたって切り崩された。メガソーラー建設地に自宅が面している遠藤玲子さん(59)は「自然堤防と生い茂った木々のおかげで、2階からでも昔は鬼怒川は見えなかった」という。
逆井さんは「本当に悔しいよ」と憤る。13年11月に病気で亡くした妻幸子さん(享年60)の遺骨は今も自宅にあった。がれきにまみれた幸子さんの車いすを手に「女房を守るためにも堤防を削るなとずっと戦ってきたんだ」と涙が噴き出た。自宅には濁流が流れ込み、妻が大好きだったバラや家庭菜園も全て流された。
近隣住民の50代女性は建設業者に脅されたという。「危ないから山を崩さないでと言ったら『あんまり騒ぐと、ここに住めなくなるよ。いいんですか』とすごまれた」と振り返る。自宅が壊滅的被害を受けた20代女性は「住民一体となって市なり、国なり訴えたい」と怒りをあらわにした。
削られた自然堤防の代わりには土のうが積み上げられただけだった。逆井さんは「危惧していたことが実際に起こった。こうなってからじゃないと、みんな分からねえんだ」と悔やんでも悔やみきれなかった。【三須一紀】
千葉卓朗、牛尾梓 2015年9月11日21時26分 朝日新聞
北関東や東北を中心に降った記録的な豪雨により浸水被害を受けた茨城県常総市若宮戸地区で、民間の太陽光発電事業者が鬼怒川の土手付近の掘削工事をしたことが、水害の要因になったのではないかと住民らが指摘している。川があふれた現場は工事場所周辺とみられ、地元住民は昨年から、危険性を訴えていた。
この地区は、鬼怒川が決壊した三坂町地区の上流約5キロにあり、10日は決壊より前に越水被害を受けた。
常総市議会の昨年5月定例会の会議録によると、若宮戸地区の鬼怒川沿いには堤防のない区間が約1キロあり、自然の土手が堤防の役割を担ってきた。昨年3月、住民からの通報で、そのうち約150メートルにわたって高さが約2メートル削られていたことがわかった。この区間は民有地で、民間の太陽光発電事業者がソーラーパネルを設置するために掘削したという。
この地区で農業を営む小林康裕さん(66)は昨春、関東地方整備局の担当者に「何とかしないと危険だ」と電話で訴えた。地区の自治会や市議にも危険性を訴え、議会で取り上げられたという。小林さんは「不安が的中した。誰がどういう理由で、土手の掘削を認めたのか、明確にしてほしい」と憤る。
市側の指摘を受け、鬼怒川を管理する国土交通省下館河川事務所は、削られた部分に土囊(どのう)を積み上げた。その後、堤防を早急に設置するため、測量や設計を実施するなど、対策を本格化させたところだった。(千葉卓朗、牛尾梓)
ソーラーパネル設置のため削られた自然堤防「一番危険な場所」も土のうだけ
スポーツ報知 9月11日(金)7時5分配信
台風18号の影響による大雨で関東や東北では10日も記録的な豪雨が続き、茨城県常総市では鬼怒川の堤防が決壊した。気象庁は10日未明から順次、栃木、茨城各県に特別警報を出した。
【写真】大雨で鬼怒川の堤防が決壊し、住宅地に流れ込む大量の水
栃木・茨城両県を襲った大雨で、鬼怒川があふれ出したとされる茨城県常総市の鬼怒川左岸にある若宮戸地区は、人工的な堤防がなく洪水の危険性が市議会などで指摘されていたことが10日、国土交通省などへの取材で分かった。鬼怒川は1級河川で国が管理している。若宮戸地区は民有地のため、堤防を造る場合、国と土地所有者の協力が必要になる。
同省関東地方整備局河川事務所などによると、若宮戸地区では、通称「十一面山」と呼ばれる丘陵部が自然堤防の役割を果たしていた。しかし昨年3月下旬、民間事業者が太陽光発電事業を行うため、横150メートル、高さ2メートル部分を削ったという。
住民から「採掘されている」と連絡があり、市は河川事務所に連絡。削ったことで、100年に1回起こりうる洪水の水位を下回ったため、民間事業者は大型土のうを積んで対策を施したという。
昨年5月の常総市議会では、風野芳之市議が無堤防化の危険性を指摘したところ、市の担当者は「この地域が無堤防地区となっており、一番危険な場所と判断している」と答弁。茨城県筑西、結城、守谷3市にも同様の無堤防地区があると説明した。市側は各市町村などと連携しながら、国に堤防設置の要望をしていると説明していた。
「無堤防」状態だったことが、今回の被害の拡大につながったかどうかについて、国交省関東地方整備局河川事務所は「因果関係は分からない」としている。
(管理人より) 少しずつ今回の鬼怒川の決壊に至るまでのことが明らかになってきました。ネット上で「デマだ!」と火消しがいちはやく入ったので逆に本当だろうと思ってましたが、メディアも流石に複数の住民の声を取り上げ報じています。
以下抜粋
●小林康裕さん(66) 昨春、関東地方整備局の担当者に「何とかしないと危険だ」と電話で訴えた。地区の自治会や市議にも危険性を訴え、議会で取り上げられたという。「不安が的中した。誰がどういう理由で、土手の掘削を認めたのか、明確にしてほしい」と憤る。
●逆井さん 「生命や財産を失う不安があった。それらを守る権利が国民にはある」と声を上げ続けた。しかし、同年5月には、同市石下庁舎の職員に「何かあれば自己責任で逃げてください」と切り捨てられた。「鼻つまみ者にされたんだ」。役所に味方にされず、逆井さんは地域で孤立していった。
●近隣住民の50代女性は建設業者に脅されたという。「危ないから山を崩さないでと言ったら『あんまり騒ぐと、ここに住めなくなるよ。いいんですか』とすごまれた」と振り返る。
何人も危険を指摘してメガソーラー建設に反対している人がいたんですね。
あれだけの大雨なんだから仕方がないだのなんだの言ってくる人がいましたが、住民合意もないままに民有地だからと進めさせている行政。
挙げ句に 庁舎の職員に「何かあれば自己責任で逃げてください」と切り捨てられたなんて!酷すぎる
そして 河川事務所は「因果関係は分からない」 なんて無責任!
国は市民の命を守らないということは、福島原発事故後にわかってはいましたが、そこから何ら変わっていないということです。
メガソーラーがあった若宮戸地区ですが、随分ネット上で「越水だ、決壊じゃない」などと騒いでいますが、 結局、気象庁は「越水」と発表し、内閣情報調査室が発表した地図には「決壊」と書いてあります。
平成27年台風第18号による大雨等に係る被災地域の加工処理画像等について 内閣情報調査室 より
地図では、若宮戸、三坂の2箇所に「決壊箇所」と書いてあります。
こんなに広範囲に被害が及んでしまったのです。
追記 こちらに 地図などの詳しい情報 ⇒ 台風18号による大雨等に係る情報 国土交通省
因果関係はわからないだの、あの大雨じゃ仕方がないだの、業者が悪いだのと騒ぐ人もいますが、状況から見て、自然の堤防となっていた丘を削ったことが越水・決壊の原因になったのではないかという想像は誰でもつきます。
土嚢の方が丘よりも弱いのですから、そこが越水してしまったら次は崩れるしかないわけです。
売電利益というニンジンをぶら下げる国策再生可能エネルギーがもたらした代償は余りにも大きいと言えます。
今回のことは、反対する人がたとえ少数でも、少数の方が正しかったということを示しています。
役所に鼻つまみ者にされ、孤立させられた逆井さん。建設業者に脅された女性。市議に訴えるも止められなかった。
これは公害事業が進められるパターンです。
これで国策再生可能エネルギーがクリーンなどではない迷惑事業だということが明白になりました。
このソーラー問題以降、今まで再エネを推進してきた人間が、今までの言説をころっと変えてみたり、各論是々非々に露骨に誘導してみたりしています。
オフグリッドならいい、地熱ならいい、原発よりましなので見守ってほしい、個人の小規模のソーラーならいいといった呆れる言い分もいまだに湧いてきています。
野立ての小規模ソーラーを並べている人も、結局、今回の水害で水没していました。流れたパネルもあるでしょう。
小規模でもメガソーラーと同じことです。
当ブログ読者の皆さん、再生可能エネルギーそのものが、資源浪費、国費浪費的な事業であり、原子力ムラに利益を誘導する新たな利権であるという情報を、どうか大切な人に伝えて共有してください。
原発をやめさせるためには、再エネ工業製品(エコキュートなど)を不買し、スマートグリッド社会に反対し続けることが重要です。
そして、こういった公害事業が身の回りに起きた場合、止める方法を市民が知りましょう。
追記 やはり、国は市民の命を守る気がないということです↓
鬼怒川決壊6地区に避難指示出ず 茨城・常総市「理由不明」 2015/09/12 20:55 【共同通信】
関東・東北水害で、大規模な被害が出た茨城県常総市が、鬼怒川の堤防が決壊した三坂町の8地区のうち、上三坂地区など6地区の約350世帯の住民に対し、決壊前に「避難指示」や「避難勧告」などの避難に関する情報を出していなかったことが12日、市への取材で分かった。
また、宮城県栗原市では12日、行方不明になっていた男性1人の遺体を新たに発見した。栃木県での犠牲者も含め、一連の水害による被害は死者4人、行方不明者15人となった。
常総市で堤防が決壊したのは、10日午後0時50分ごろ。市の避難指示が遅れたことで、被害が拡大した可能性もある。
参考
【防災情報提供センター】 国交省が保有する 防災情報を集約したサイトです。
国土交通省が保有する防災情報を集約して、わかりやすく提供しています。