1998年初版 『エコロジー神話の功罪 サルとして感じ、人として歩め』 槌田敦 著 p63〜67 から引用
槌田敦(つちだ あつし)槌田 敦は、日本の物理学者、環境経済学者。 東京生まれ。東京都立大学理学部化学科卒。東京大学大学院物理課程中途退学、助手を経て理化学研究所研究員。1966年東大理学博士。名城大学経済学部教授を経て、現在高千穂大学非常勤講師。父が化学者槌田龍太郎, 兄弟に 槌田劭 がいる科学者家族。
環境問題を開放系熱力学により分析する「槌田エントロピー理論」を掲げ、独自の立場からエネルギー問題や廃棄物・リサイクル問題に取り組む。1970年代初頭から、反核・反原発を主張し、核融合技術の開発にも反対している
赤字、強調はブログ管理人によるものです。
【生活クラブ生協の不思議な動き】
生活クラブ生協という団体があります。この団体は、原発には否定的で、これまで放射能の汚染問題などに積極的に取り組んできました。ところが、東京電力から1件あたり150万円の助成金をもらって、3年間で450軒という太陽光発電事業を始めることになりました。
新築では個人負担は130万円を目標にするそうです。既築の場合には屋根の補修費が必要ですから割高になりますが、その場合提携ローンが可能ということになっています。この活動に共鳴した組合員のひとりはパート勤めをして月3万5千円のローンを組んで購入するといいます。
原発に反対という団体と東京電力の共同事業とは、これまた不思議なことが始まりました。これをどのように考えたらよいのでしょうか。
この生協を含め、原発に反対するグループの中に、原発に反対するなら原発に代わるエネルギーを提案すべきだという人たちがいます。その人たちは、自然エネルギー、特に太陽光に注目しています。
しかし、太陽光がだめなことはすでに述べたとおりです。どのように見積もっても代替エネルギーにはなり得ない技術なのです。
私はこの生協の組合員です。太陽光発電を掲げて原発に反対するのは間違いだという意見を私が持っていることは、この生協の幹部のみなさんはよくご存知のはずです。しかし、これに関して意見を求められたことはありませんでした。
そこで手紙を書き、直接問い合わせることにしました。手紙の内容は「キロワット時25円について、いつまで東京電力がこの金額を保証するのか、について交渉し、その結果を購入予定者に知らせる必要があるのではないか」というものでした。
しかし、何の返事もなく、事業はそのまま続けられています。反対派と議論せずに、推進派だけで計画を推し進めてしまうのは、原子力発電所のやり方とまったく同じです。
【屋根に乗せられてはしごを外される善良な協力者たち】
ところで、東京電力はなぜ太陽光発電に取り組むのでしょうか。その理由を東京電力の勝俣恒久企画部長は次のように答えています。
「太陽光発電への期待が大きく、中には原発の代用にすればいいという意見もある。しかし、実際に使ってみれば主役にはならないエネルギーだと分かるはず」
と述べています(朝日新聞 97年4月8日)
太陽光ではだめだということを、実際に使ってもらえば原発反対という人たちにも理解してもらえるのではないか、というのです。もともと東京電力では、太陽光発電になんの意味も感じていないのです。
太陽光発電を代替エネルギーに据えて原発に対抗しようなどということは、そもそも無理です。しかし、そのことを原発に反対している人たちに理解してもらうためだけに、東京電力は今後3年間で10億円も拠出するというのです。なぜこのような馬鹿ばかしいことに巨額の費用を使うのでしょうか。
電力会社は、今、原発の新規立地がうまくいかないため、原子力関連のPR予算の使い道に困っています。そのひとつとして、東京電力が福島県に建設する巨大なサッカー場があげられます。
建設費は130億円ですが、東京電力内部の原子力派にとって、既得権としての予算を使わないと取り上げられてしまいます。そこでこのような大盤振る舞いをしているのだと考えざるをえません。
しかし、実は、東京電力には、そのような目的のために支出する余裕はもはやなくなっています。したがって、太陽光発電への優遇で高価に売電できるのは、ここしばらくの間のことと思われます。まもなく、太陽光発電も他の新規発電所並みにキロワット時あたり5〜10円でしか買ってもらえないことになるはずです。これではローンを返す費用にもならないに違いありません。その結果、生協の薦めで太陽光発電器を購入した組合員は、屋根に乗せられてはしごを外された状況に追い込まれることになります。
しかし、おそらくこの組合員たちは、「子どもに電気の節約の貴さを教えることができた。環境問題を考える良い材料になった」などと負け惜しみを言うでしょう。しかし、教育費としては高額すぎるうえに、屋根の上に残る巨大な廃棄物をどのように撤去するかで先ざき悩まなければならなくなるでしょう。
【「戦術」を使うな】
動燃の相次ぐ事故とこれを隠蔽する不祥事は、原発の経済性欠如による手抜きで生じました。このことからも分かるように、原発は放射能という原発自体の欠陥で、経済性が成り立たなくなっています。これによりやがて中止に追い込まれることになります。したがって、原発に反対するのに、代わりのエネルギーを提案しなければならない理由はありません。
「代替案を示さずに反対だけするのは無責任だ」という推進側のおどし文句に引っ掛かって、太陽光発電の導入に一般組合員を巻き込むのはどう考えても間違いです。
以前、エイモリー・ロビンズという人が『ソフト・エネルギー・パス』(日本語版1979年刊)という有名な著書を出し、原発の代わりは自然エネルギーだと主張したことがありました。しかし、彼はこのことが実現不可能であることを知っていました。知っていながら、それを隠していたのです。私の友人がこの矛盾を突いたとき、彼は「タクティクス(戦術)だ」と答えました。
反対運動をするときに、しばしばこのような戦術が使われます。この場合は、太陽光を掲げて原発に反対するのですが、そのような姑息な戦術ではやがて反対運動そのものを破綻させます。反対するのなら、堂々と真正面から原発問題に取り組むべきです。
(管理人より)
前回のブログ記事では1997年に、生活クラブが東電から助成金をもらっていたことを書きました。今日は、その当時のことを書かれた文章を紹介します。
1998年に書かれた槌田敦さんの 『エコロジー神話の功罪』の中の一節です。
原発事故当時、東京電力代表取締役会長だった勝俣恒久氏は、1997年時点では企画部長として、東京電力の太陽光発電導入の目的を朝日新聞で語っていました。はっきり、原発反対市民に原発の必要性を分からせるためだと言っていますね。驚きました
このあと、国や東京電力は、生協や環境NPOなどに何年間も補助金・助成金をばら撒き続け、市民を骨抜きにしていきました。この上の文章が書かれた段階では、まだ原発事故が起きてないので、買取価格が下がるという予測を槌田さんはしておられますが、実際には制度が作られ買取価格は上がって行きました。
<追記> 当時、生活クラブでパネルを設置した人の声があったので掲載します。
http://celc-pv.com/celc-gaiyo/soshiki.html より
自分が損をしてまで礎になるなんて! 国と電力会社にまんまと騙されています。文句を言ってこない詐欺被害者なんですから好都合でしょうね。
まあ、2008年に余剰買取が始まったおかげで収支は少しはましになったかもしれませんが、パネルは劣化して発電効率は落ちていたかもしれないですね。それも、途中で壊れて撤去してなければの話ですが。
時系列で並べてみます。
1997年 生活クラブが東電から助成金貰う。
1997 年から2005 年まで国が補助金制度を実施する
RPS法 電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法 (2002〜2012) 買取費用負担は電力会社(25円/kWh?不明)
↓↓↓
2009年 太陽光発電の余剰買取制度スタート 買取費用を「太陽光発電促進付加金」として電気利用者全員に負担させられるようになった。
平成23年度(2011年)〜平成24年(2012年)6月までの買取価格は、住宅用(10kW未満)42円/kWh、住宅用(10kW以上)及び非住宅用40円/kWh等の買取価格
↓↓↓
2011年 再生可能エネルギー特措法
2011年 福島原発事故
↓↓↓
2012年 固定買取制度スタート 買取費用を「再生可能エネルギー賦課金」として電気利用者全員に負担させられるようになった。
再生可能エネルギーの固定買取制度について
平成26年度(2014年)4月〜平成27年(2015年)3月までの買取価格は、住宅用(10kW未満)37円/kWh、住宅用(10kW以上)及び非住宅用32円/kWh等の買取価格
(管理人より)自宅屋根にソーラーパネルをのせて自分の家の電気代を安くしたい、余ったら売って儲けたいと思う人が10年間でこんなに増えました。
住宅用太陽光発電の普及に向けた公的補助金の定量分析 2009 年11 月 より
住宅用太陽光発電システムの普及に向けた国の導入促進事業の一つに新エネルギー財団 (以下,NEF とよぶ) を通じた補助金制度がある. この制度では 1994 年から 2005 年の間に総額 1340 億円の補助金が給付され, 同制度を利用した導入件数は 25 万 4 千件, 累積導入量は 932MW に上っている.
図 3 にはこれまでの補助金の交付額の推移を示した. 1994 年度に導入容量 1kW 当たり 90 万円であった交付額は, 導入件数の増加ともに毎年減額され, 事業最終年度の 2005 年度には 2 万円となった. なお 2005 年度に一旦打ち切られた補助金制度であるが, 2008 年度から 1kW あたり 7 万円の助成額にて再開されている.
(管理人より)2008年までは東京電力が買い取っていたのが、買取費用を全電気利用者にかぶせてからさらに一気にパネルが増えました。それと同時に契約トラブルも増えています。
http://www.nattoku-solar.com/pages/yoku_04.html より
2011年の福島原発事故後は、「電力会社を困らせたいから、電力を買わせるためにパネルをのせる」という市民がいますが、全市民に負担させてるだけのことです。
電力会社は困っていません。再エネ賦課金がパネルをのせてない人や、自然エネルギーに反対する人からも徴収され、分けられているだけのことです。
福島原発事故後は、売電で儲けることをちらつかせ、原発体制を補完させる目的でパネルを猛烈に推進してきたということです。まさにショックドクトリン。
総合エネルギー調査会原子力部会第53回 議事要旨 より
日 時:平成10年4月22日(水)10:00〜12:00 場 所:通商産業省第1、2、3共用会議室
をみてみると 生活クラブに補助金を与えた審査委員長 茅陽一は、この会議では総合エネルギー調査会会長。
(
http://www.tepco.co.jp/cc/press/97032701-j.html 東電プレスリリース 1997年)
南委員(東京電力株式会社 取締役副社長)
深見委員の御発言に関連して、改めてお願いしたいのですが、昨日の原産会議の市民討論を伺っていても、とにかく太陽光等の自然エネルギーに対する期待なり可能性を評価する方がたいへん多い。ですから、自然エネルギーに関する客観的、現実的データを徹底的に集大成した資料を作っていただきたい。太陽をはじめとする自然エネルギーを一生懸命推進されようとする人たちの意見も徹底的に聞いて、実証データをぜひ作っていただきたいなと思います。
当社も自然エネルギーを推進しようとしているんですが、どうしても限界があると感じています。その可能性と限界を共有できるようなデータをこの機会に作っていただいたらと思います。
また、マクロ的、理論的な数字で語られることが多い。「ほぼ大阪府に匹敵」とか、「電力全体を置き換えるには栃木県の面積で足りる」など、理論的な量だけでなく、現場で現実にそれを使うときの具体的なイメージも含めて、例えば風力にしても、太陽光にしても、出力というのは瞬時瞬時にすごく変動しています。そういうようなこともご理解いただいた上で、どこまで使えるか。
「必要なときに必要な電力が確保される保証はない」と今日の資料にも書いてあります。正にそのとおりですが、これをもう少し具体的イメージでわかるような形で作っていただくと、共通の会話のベースができるのではないかと思っています。
コストももちろんですが、コストだけではなくて、原子力等の発電所で作っている電気の質と自然エネルギーで作る電気の質というのはこんなに違う、そして、生活が求める電気の質というのはこういうものである、そのギャップをどうやって埋めていったらいいか。
それは全部コストをかければ解決できますから、最後はコストの問題になろうと思いますが、なぜわざわざ電気に変えるのか、自然エネルギーのまま使えばいいではないかといういわゆるパッシブ・ソーラシステム的な発想も当然入ってくると思います。私の子供の頃、水車が現に動いておりましたが、なぜ水車で米をついていたのを水力発電に変えて、電気のモーターで米をつくようになったのか、いろいろなものを集めていただけると大変役に立つと思います。この機会にぜひ膨大な資料をうまく整理していただければと思います。
それからもう1点、原子力というのは、単に発電所の燃料を化石燃料とするか、原子エネルギー・核分裂とするかの違いだけではなくて、原子力の一番の特徴は一度使った燃料を繰り返し何十倍にも使える可能性がある。100年以内に枯渇するエネルギー資源の中で石炭以上に1000年オーダーで使える可能性のあるエネルギー・ソースは今のところこれしかない。この特徴を持つ原子力を研究開発し、サイクル全般を後世代のために大事に準備していく必要がある。
この原子力の特徴というのもご理解いただき、自然エネルギー(電池と組み合わせて)と原子力の相互補完による電力確保について、一緒に議論できる機会ができればと思っております。
勝俣企画部長は1997年の時点では、太陽光パネルがダメだと分からせるためにパネルを普及させると言い、東電の南取締役副社長は自然エネで原子力を補完させると言っていたわけですね
どんなに市民がパネルを買って普及しても、電力会社は原発をなくすつもりなど一切ないことがわかります。
結局、市民が騙されているということです。
1993年5月に当時の環境庁が中心となり、民間団体による環境保全活動を支援するため、、国と民間の拠出で地球環境基金が作られました。
平成10年1998年から環境NPO、NGOに助成金をばらまいていることがわかります。
http://www.erca.go.jp/jfge/about/situation/situation01.html
地球温暖化防止名目で、環境NPOは、国策自然エネルギーを推進する機関になったということです。
脱原発市民運動の地域での中心的人物は、こういった助成金を受けているNPO関係者ではありませんか?
http://www.erca.go.jp/jfge/about/situation/situation03.html